金の資産価値があると知って、相続対策に活用できるのではないかと思った人もいるでしょう。
日本では相続税の増税がおこなわれたため、いかにして子孫に資産を残すかを考えるのが重要になっています。
金を資産として保有し、相続税対策をするのは有効なのでしょうか。この記事では相続資産として金を選ぶ利点・欠点をわかりやすく解説します。
金を資産として保有していた場合の相続税評価の方法や金による相続対策のよくある質問の回答も紹介するので参考にしてください。
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相続財産を何にするかは子孫に財産を残したいと思っている人にとって重要な問題でしょう。
すべて現金にしておけば良いとは一概に言えません。貨幣価値は刻々と変わっていくため、他の資産にしておいた方が価値が上がる可能性もあります。
受け取った子孫にとってメリットになるかどうかも重要なポイントでしょう。金で相続財産を残すと何が利点になるのでしょうか。
金を相続財産にすると資産としての価値が長期的に安定するのがメリットです。金は実物資産として遥か昔から高い価値を持っています。
金の相場は短期的には激しく上下動を起こしていますが、長期的に見ると上がり続けています。金は歴史的に見ても通貨と同様の価値がある資産として用いられてきました。
金の美しさや不変の神秘性は信仰や崇拝の対象になっていた時代もあります。現在でもアクセサリーなどの宝飾品では欠かせない素材の一つで、高い価値が維持されています。
電子部品や医療材料などのとしても利用されるようになり、金の需要は高まる一方です。長期的には資産として価値が上がる可能性が高く、少なくとも安定した価値を維持し続けられると考えられるのが金の魅力です。
相続財産として金を選べば相続時点だけでなく、相続後も貴重な価値のある資産として子孫に活用してもらえるでしょう。
金は相続財産にするとインフレ対策になるのが利点です。インフレとは経済用語のインフレーションの略語で、物価が上昇することを指します。
近年では物価の上昇によって金融政策による物価調整がおこなわれることも多くなりました。物価が上昇すると相対的に日本円や米ドルなどの通貨の価値が下がります。
物価と通貨価値の関係 | |
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物価 | 通貨の価値 |
モノの価値が上がってしまって身の回りのものを購入したくても高くて困ってしまう状況になるのがインフレです。インフレ傾向が強い現代では、現金を持っていたとしても資産価値が相対的に低下してしまうリスクがあります。
しかし、モノとしての資産を持っていればインフレによって価値が上昇していくと期待できます。建物のように経年劣化をしてしまうモノでは相続財産にしても価値が低下してしまって財産を減らすことになるでしょう。
金はモノとして不変の価値があります。金は銅や鉄などと違って錆びて品質が低下することもなく、いつまでも安定した価値を保ちます。
インフレによって貨幣の価値が下がったとしても、金は価値が上がるので大きな相続財産を残すことが可能です。インフレ対策のリスクヘッジ資産として金を相続財産にするのは賢い方法です。
金は維持コストがあまりかからないので相続財産に向いています。金は手入れをしなくても錆びることはなく、安定した資産として存在し続けます。
ただ、価値が高くて需要が高い資産なら、金よりも不動産を相続財産にした方が良いのではないかと思う人もいるでしょう。
維持コスト | |
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不動産 |
・管理費、修繕費 |
・固定資産税 |
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・都市計画税(都市部の場合) |
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・火災保険等の保険代金 |
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金地金 |
・保管料 |
確かに土地や建物は相続財産として価値が高く、子孫が住む場所としても、賃貸経営をする物件としても利用できます。相続財産の中でも人気がありますが、所有していると固定資産税と都市計画税を毎年納めなければなりません。
建物は定期的にメンテナンスをする必要があり、マンションやアパートなどの場合には大規模修繕工事のために数百万円くらいの費用がかかることもあります。
賃貸経営をする場合には入居者や退居者への対応も必要で、管理会社に依頼するとコストがかさんでしまいがちです。
しかし、金は固定資産税などが一切かかりません。安全に保管するには金庫に入れておいた方が良いというくらいです。
金の取り扱い業者では購入した金をそのまま預かってくれるサービスもあります。保管料込みでの販売をしているケースもあるため、維持コストを余計にかけずに金を所有することも可能です。
金には相続財産として持つ魅力があるのは確かです。ただ、金資産も万能というわけではありません。
ここでは、相続対策をするときに金資産にどのような欠点があるかを解説します。金を相続財産にする利点と照らし合わせて良し悪しを考えてみましょう。
金はモノなので所有していても資産が増えるわけではないのが欠点です。
日本ではゼロ金利政策が取られているので、銀行で普通預金に預けていてもほとんど資産が増えません。しかし、金利が低い銀行でも0.001%、高いところなら0.2%くらいの年利で利子収入を得られます。
資産を保有しているだけで株式なら配当金、投資信託なら分配金を手に入れることが可能です。土地と建物を持っている場合には賃貸経営をすると家賃収入を得られる可能性もあります。
金はあくまでモノであって証券ではなく、不動産のように借りてもらえる資産でもありません。利益を生み出すには安いときに購入して、高いときに売却することが必要です。
所有していれば資産が増える仕組みの財産ではないので注意しましょう。
相続財産として金資産を持つと価格変動リスクがあります。日本円との相対価値を考えたときに、デフレが起きたら価値は下がるのが一般的です。
デフレとはインフレの逆で、物価が下がる経済動向を指します。一時的な物価の低迷であればすぐにまたもとの物価水準に戻ることもありますが、長期的なデフレが起こると財産価値が低下してしまうので注意が必要です。
社会情勢による金の価格変動はさまざまな要因によって起こります。一般的に金は有事に購入される傾向が強まるのが特徴です。
戦争や紛争、テロだけでなく、新型インフルエンザや新型コロナウイルスの感染によるパンデミックでも金が買われて価格が上がる傾向があります。そのタイミングで金を購入し、世界情勢が安定すると価格が下がって資産価値が目減りするリスクがあります。
金の現物を売買するときには手数料がかかるのが欠点です。特に金地金の重量が小さい場合には購入手数料も売却手数料もかかる場合が多くなっています。
例えば、田中貴金属工業では100gの金地金の購入時には16,500円、売却時にも16,500円の手数料がかかります。大手の金地金販売業者では手数料の相場の足並みを揃えているので、ほぼ同じ売買手数料の負担が必要です。
金地金100gの売買手数料 | |
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田中貴金属工業 |
購入:16,500円 |
売却:16,500円 |
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三菱マテリアル |
購入:8,250円 |
売却:11,000円 |
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楽天証券 |
購入:購入代金×1.65% |
売却:5,500円 |
相続財産として持ち続けるのであれば一度の購入手数料の負担で済みます。ただ、相続後に子孫が金を売却しようとした時点で手数料の負担を強いることになるので注意しましょう。
一般的には500g以上の金地金では売買手数料が無料になります。2022年10月時点では店頭小売価格は1gあたり8,500円前後になっているため、500gの購入には425万円が必要です。
手数料を無料にするにはまとまった現金資産を交換する必要があるので注意が必要です。
金を相続財産として持っていた場合には相続税評価額を計算して課税相続財産の算出に用います。
金の相続税評価は亡くなった日の金取扱業者における買取価格に基づいて計算するのが原則です。金の購入のときや遺産分割協議のときの価格ではないので注意しましょう。
業者買取価格は所有している金地金の刻印からどの業者の取り扱いかを確認して調査します。
大抵の業者では当日の買取価格をホームページで明示しているので、故人が亡くなった日にすぐに確認すればわかります。後になってから調査が必要になった場合には、業者に直接問い合わせて確認するのが最も確実です。
金地金の刻印 | |
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商標 |
製錬した企業のブランドマークのことです。 |
品位表示 |
金の純度を示します。 |
重量表示 |
重さをグラムで表します。 |
地金番号 |
金地金の製造番号がふられています。同じ番号のものは存在しません。 |
業者に金を預かってもらっている場合には、ホームページでも確認できるだけでなく、問い合わせても正確な金額を提示してもらえます。
保管を依頼しておくと相続のときに金の現物の管理に悩むこともなく、刻印からどの業者に問い合わせたら良いかを考える必要もありません。
ルミゴールドは金資産の保管受託を前提として金資産の運用ができます。相続税評価でトラブルを起こさないようにするにはルミゴールドを利用するのがおすすめです。
金の相続税評価について解説しましたが、そもそも金の相続をしたときに相続税がかかるのでしょうか。
結論としては金には資産価値があるので相続税がかかります。上述の相続性評価額に基づいて相続財産の一部として認められ、他の相続財産と合わせた金額に応じて相続税を計算して納めなければなりません。
現金を金資産にしたからといって相続税をなくせるわけではないので気を付けましょう。
金を相続財産として相続税の対策をする方法は魅力があります。
ただ、相続対策のやり方によっては大きな問題を引き起こすリスクがあるので、賢明な方法をここで理解しておきましょう。
相続財産として金の仏像がよく着目されています。相続税が非課税になる対象として祭祀財産があるからです。
仏像は祭祀財産として認められるので相続税対策になると考えられるのは確かでしょう。確かに金の仏像で先祖をずっと祀っていたのであれば非課税財産になります。
しかし、晩年になって金の仏像を制作したり、祀るのに使用せずに倉庫に保管していたりした場合には祭祀財産として認められません。金地金から金の仏像を作るには加工コストもかかるので、結果的には損をすることになるでしょう。
現金を金地金にして隠しておけば相続税を免れられるという話もよく噂になっています。しかし、金は相続財産に該当するので、隠していたらただの脱税です。
相続のときには大きな相続税を徴収できるメリットがあるため、税務署は徹底して調査をするのが一般的です。
金地金を購入した場合には200万円を超える取引であれば本人確認書類の提出が求められるのが通常で、200万円を超える売却の場合には支払調書が税務署に提出されます。
そのため、少額でない限りは税務署は金の所有者を把握しています。少額だったとしても預貯金の記録などから調査をするので、バレる場合がほとんどです。
悪質な場合には裁判沙汰になるリスクもあります。
少なくとも加算税の対象になるので、金の相続をしたときには誠実に申告するのが大切です。
上述のように金資産は相続財産としてコストがあまりかかりません。
モノとしての資産では土地がよく相続税の節税に用いられていますが、土地は価格変動リスクが高いだけでなく、固定資産税や都市計画税がかかるのがデメリットです。
金資産なら現金を持っているのと同様に固定資産税がかかりません。金は限られた貴重な資源なので大きな価格変動が起こるリスクはありません。
金は相続財産として安全性が高く、インフレになって現金価値が下がったときのリスクヘッジにもなります。安全な資産を相続財産にするには、資産の一部は金にしておくのが賢明でしょう。
固定資産税がかからないので、早めに金資産にしておいて家族などの相続人に金の存在を伝えておくのがおすすめです。
金地金などの金資産を購入して相続財産にすることは可能で、安定財産として魅力があります。維持コストもほとんどかからないメリットがあるので、相続財産の一部として用意するのは賢い方法でしょう。
ただ、金は価格変動リスクがあるだけでなく、売買手数料がかかることもあるのは注意した方が良い点です。インフレ対策としては効果的で、土地や建物などの不動産と違って固定資産税もかかりません。
金地金は最もリスクが低くて子孫にとっても喜ばれる金資産です。保管の負担を子孫にかけないためにも、ルミゴールドのように保管を前提としている金取扱業者を選んで金資産を保有して相続対策をしましょう。