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金の売却で収益を得た際の確定申告の方法とは

金の売却で収益を得た際の確定申告の方法とは

金の売却によって収益が出た場合には確定申告をして納税する必要があります。

投資では証券会社の特定口座で源泉徴収をしてもらっていれば確定申告が不要です。

しかし、金地金などの金の現物取引をする場合には売却時に得られた収益に対して自分で税額を計算して納税しなければなりません。

この記事では金の売却によって収益が発生したときの税額の計算方法をわかりやすく例を挙げながら解説します。確定申告をするときの注意点も紹介するので、正しく納税の義務を果たしましょう。

金を売却した際にかかる税金は?

金の売却によって収益が出た場合には税金を納めなければなりません。ただ、金を売却した際にどのような税金がかかるのかがわからない人もいるでしょう。

会社員や公務員として働いていて副業経験がない場合には、給料以外の収入にどのような税金がかかる場合があるのかを知らないこともよくあります。

金の売却による収益は譲渡所得、事業所得、雑所得のいずれかに該当します。

所得区分 一般的な対象者
譲渡所得

会社員や公務員として働いている人や、専業主婦や無職の人の場合には一般的に譲渡所得に該当します。

事業所得

事業として金の売買によって利益を得ている場合には事業所得です。
個人事業主でも会社経営者でも同じで、事業内容に金の売買が含まれていたら事業所得として取り扱います。

雑所得

事業としては金の売買をしていないけれど、個人が営利目的で金を売却して利益を得たという場合には雑所得です。

多くの方の場合には金の売却益は譲渡所得になります。譲渡所得は資産の譲渡や売却をしたときに生じる所得のことで、金だけでなく銀やプラチナなどの価値の高い貴金属、土地や建物、株式や会員権などの売買も含まれます。

業者への売却ではなく個人間で売却した場合や買い取った場合にも譲渡所得です。授受した資産の価値に応じて課税額が決まります。

金の売却をした年に、他の資産の売買もしていた場合にはその譲渡所得も合わせて税額を計算して確定申告をすることが必要です。

これは事業所得や雑所得の場合のも同様で、例えば事業として金の売買をしたなら他の事業所得と合わせて事業税を計算することが求められます。

売却益の課税対象額の計算方法

金の売却益が譲渡所得になる場合について、具体的にどのように税額を計算したら良いかを見ていきましょう。

金を売却したときに、得られた金額がすべて課税対象になるわけではありません。課税対象額は一般的には売却額よりも小さくなります。

売却益の課税対象額の計算方法は金を所有していた期間によって異なるので注意が必要です。

譲渡所得 金を所有していた期間
短期譲渡所得

5年以内

長期譲渡所得

5年を超える

金を所有していた期間が5年以内の場合には短期譲渡所得、5年を超えていた場合には長期譲渡所得になります。

それぞれのケースについてどのような計算をすると課税対象額を計算できるかを確認しておきましょう。

短期譲渡所得の計算方法

短期譲渡所得に該当する場合には金の譲渡益に金売却以外による譲渡益を加えた金額から、譲渡所得の特別控除として50万円を引いた金額が課税対象額になります。

計算式にすると以下の通りです。

課税対象額=譲渡所得=金の譲渡益+その他の譲渡益-50万円

金の譲渡益は売却額とは異なります。譲渡所得の計算では、売却額から資産を取得するのにかかった費用(取得費)と売却にかかった諸費用(譲渡費用)を差し引いた金額を譲渡益とします。

譲渡費用は金の売却手数料や振込手数料などの各種手数料、金の売買に仲介サービスを利用した場合には仲介料金などを含めることが可能です。

金の譲渡益は以下のようにして計算できます。

金の譲渡益=金の売却額-金の購入額-金の売却にかかった諸費用

もし課税対象額を計算して0以下だったなら課税対象にはなりません。

例えば、200万円で購入した金を260万円で売却したとします。

売却時に手数料や仲介料として20万円がかかったとしたら、以下のように課税対象額を計算できます。ここでは簡単のために、他の譲渡所得はなかったものとして計算します。

金の譲渡益=260万円-200万円-20万円=40万円

課税対象額=譲渡所得=40万円-50万円=-10万円

このような場合には非課税になるので納税は不要です。しかし、売却時に手数料などが一切かからず、譲渡費用がゼロだったとすると以下のように課税されます。

金の譲渡益=260万円-200万円=60万円

課税対象額=60万円-50万円=10万円

譲渡所得に課税対象額がある場合には納税の義務が発生します。

後述のように譲渡所得は総合課税の対象なので、給与所得や事業所得などと合わせて税額を計算することが必要です。

長期譲渡所得の計算方法

長期譲渡所得に該当する場合には、課税所得額が短期譲渡所得の場合に比べて少なくなります。

長期譲渡所得の場合には譲渡所得の半分が課税対象になるのが日本の税制です。

以下のように譲渡所得の特別控除を適用して譲渡所得を計算した上で、2で割ることにより課税対象額を計算できます。

課税対象額=譲渡所得÷2

譲渡所得=金の譲渡益+その他の譲渡益-50万円

金の譲渡益=金の売却額-金の購入額-金の売却にかかった費用

例えば、300万円で購入した金を10年間所有して、400万円で売却したとしましょう。

売却時にかかった手数料が10万円で、他に譲渡所得がなかったとすると以下のように計算できます。

金の譲渡益=400万円-300万円-10万円=90万円

譲渡所得=90万円-50万円=40万円

課税対象額=40万円÷2=20万円

長期譲渡所得のときに気を付けておきたいのが、課税の有無は短期譲渡所得の場合と同じという点です。

特別控除の金額は50万円のままなので、課税所得がある限りは課税対象になります。長期間にわたって所有したからといって、税金がかかるかかからないかは変わらないので注意しましょう。

短期と長期両方ある場合

実際には同一年内に複数の金を売却するケースもあるでしょう。

金の価格が急騰したときや現金が早急に必要になったときには所有期間が5年以内の金と、5年を超えた金の売却をすることもよくあります。

短期譲渡所得と長期譲渡所得が両方ある場合にはどのように課税対象額を計算するのでしょうか。

個別に計算して合算

短期譲渡所得と長期譲渡所得がある場合には個別に計算して合算します。ただ、気を付けなければならないのが譲渡所得の特別控除額です。

特別控除は個々の金の売却に対して適用できるわけではありません。短期譲渡所得から優先して控除する仕組みになっています。

例えば、2年間所有していた金と10年間保有していた金を同じ年に売却したケースを考えてみましょう。

2難関所有していた金は購入価格が100万円で売却価格が120万円、10年間保有していた金の購入価格が500万円で売却価格が800万円だったとします。

譲渡費用としてそれぞれ売却価格の10%がかかったとして課税対象額がいくらになるかを計算してみましょう。

・短期譲渡所得

金の譲渡益=120万円-100万円-12万円=8万円

課税対象額=8万円-8万円=0円(特別控除の残額は42万円)

・長期譲渡所得

金の譲渡益=800万円-500万円-80万円=220万円

譲渡所得=220万円-42万円=178万円

課税対象額=178万円÷2=89万円

・課税対象額の合計

課税対象額の合計=0円+89万円=89万円

短期譲渡所得が完全に控除によって相殺されているので、課税対象額は長期譲渡所得から算出された89万円になります。

もし2年間所有していた金が250万円で売却できたとしたら、以下のように計算します。

・短期譲渡所得

金の譲渡益=250万円-100万円-25万円=75万円

課税対象額=75万円-50万円=25万円(特別控除の残額は0円)

・長期譲渡所得

金の譲渡益=800万円-500万円-80万円=220万円

譲渡所得=220万円-0円=220万円

課税対象額=220万円÷2=110万円

・課税対象額の合計

課税対象額の合計=25万円+110万円=135万円

この場合には短期譲渡所得の相殺に特別控除がすべて使用されてしまったため、長期譲渡所得には控除がありません。

短期譲渡所得、長期譲渡所得による課税対象額を合わせた135万円が課税対象額になります。

金で儲けたら確定申告が必要です!

金の売却によって収益を出した場合には原則として確定申告をする必要があります。

事業として金の売買をしているときの事業所得や営利目的での売買による雑所得にも同じですが、譲渡所得は総合課税なので他の総合所得に該当する所得と合わせて所得税の確定申告をしなければなりません。

総合課税に該当するのは給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得、一時所得、配当所得、利子所得、譲渡所得です。

総合課税に該当する所得

給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得
一時所得、配当所得、利子所得、譲渡所得

厳密に言えば一時所得、雑所得、配当所得、利子所得などは総合課税の対象にならない場合もあります。

総合課税の対象になる場合にはそれぞれの課税対象額を合計した上で、累進課税制度に基づいて税率と控除額を適用することが必要です。

例えば、給与所得が300万円の場合には税率が10%ですが、金の売却による譲渡所得が50万円あったとすると、所得税の税率は20%に上がります。

所得 所得税の税率
給与所得:300万円

税率:10%

給与所得:300万円
金の売却による譲渡所得:50万円

税率:20%

195万円以上330万円未満は税率が10%、330万円以上695万円未満は20%と定められているからです。

このようなケースでは給与所得の税率も上がるので注意しましょう。所得税の税率は変更されることがあるので、国税庁の公開している所得税の税率を確認してから計算して確定申告をするのが大切です。

ただし、確定申告が不要なケースもあります。

対象者 条件
会社員や公務員などの
給与所得者

年間20万円までの所得

働いていない人

金の売却による事業所得の課税額が48万円以下

会社員や公務員などの給与所得者の場合には年間20万円までの所得であれば確定申告の義務が免除されます。

働いていない人の場合には金の売却による収益が基礎控除の範囲内に入る場合には確定申告が不要です。現状の基礎控除は所得がない場合には48万円なので、金の売却による事業所得の課税額が48万円以下であれば課税されません。

金地金を売却した場合には収益が出ることが多いでしょう。働いていて給与所得や事業所得がある場合には、確定申告をすると納税によって損をするのが嫌だと思うかもしれません。

ただ、確定申告をしないことによるペナルティがあるだけでなく、未納の税金については延滞税を上乗せされて納入を求められることになります。

疑わしい部分があると徹底した税務調査がおこなわれるので、金の売却で収益が出たときには必ず確定申告をして納税の義務を果たしましょう。

金地金などの支払調書制度がある

金の売却で収益を得て確定申告をするときには支払調書制度について理解しておく必要があります。

支払調書制度とは一定の取引条件を満たしたときに、購入側が支払調書を提出することを義務付けている制度です。金地金の売却の場合には、一回の取引で税込200万円を超えた場合には支払調書の提出が求められます。

金の売却をした側は購入側から支払調書の交付を受けるのが一般的です。そして、購入側の事業者から税務署に支払調書が提出されます。

支払調書記載内容
記載内容

・氏名
・住所
・売却した金の数量
・支払い金額
・支払い年月日

支払調書制度の対象として金が該当するようになったのは、金の売却益についての確定申告をしていないケースが目立ったからです。

そのため、売却額が200万円を超えたときには税務署による徹底したチェックが入る可能性が高く、未申告だった場合には税務調査を受けたり、延滞税を上乗せした税金の納入を求められたりする可能性が高いでしょう。

納税は日本に住む限りは皆が平等におこなわなければならない義務なので、金売却をして収益があったときには必ず確定申告をしましょう。

まとめ

金の売却によって収益が出た場合には確定申告と納税が必要になります。金の売却による収益は会社員や公務員、専業主婦などの場合には譲渡所得を計算して、総合課税として税額を算出する必要があります。

譲渡所得の特別控除や基礎控除によって非課税になる場合もありますが、大きな収益を得たときには確定申告をしなければなりません。

支払調書制度によって200万円を超える取引をしたときには税務署の目も厳しくなっています。年が明けたら前年の売却益を計算して2月~3月の期日内に確定申告をしましょう。