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金の購入や売却時は税金がかかる?注意点やポイントを解説

金の購入や売却時は税金がかかる?注意点やポイントを解説

金の売買をするときには税金を納めなければならないのかどうかが気になっている方もいるでしょう。

資産運用の方法として金を選んだ方にとっては、税金がかかることによって利益が減ってしまうのは悩みになります。

一般的な投資では取引によって得られた利益に対して所得税がかかりますが、金の購入や売却の場合にはどのような税制になっているのでしょうか。

この記事では金の売買や保有に関連する税金について紹介します。それぞれの税金について注意点やポイントも解説するので参考にしてください。

金の売買でかかる消費税について

金の購入や売却をするときにまずかかるのが消費税です。日本ではモノやサービスの売買の取引をするときには消費税がかかります。

日用品や食品などと同様に金も消費税の対象になります。

ただ、普段は消費者として商品の購入をするだけで、商品の販売をしていないと消費税について詳しい知識がない場合もあるでしょう。

事業者として商品の売買をしている人にとってはよく知っていることかもしれませんが、消費税は購入・売却の両方のときにかかります。

消費税は最終的に誰が納税するのかについても解説するので、ここで確認しておきましょう。

金を購入するときの消費税

金を購入するときに消費税がかかるのはイメージしやすい人が多いでしょう。食品を購入したり、サービスの利用料金を支払ったりするときには消費税がかかります。

金の購入をするときにも消費税を支払わなければなりません。日本では原則として10%の消費税がかかる仕組みになっています。

食品や飲料などの一部については軽減税率が適用されていますが、金は軽減税率の対象ではありません。

適用される税率
人の飲用または食用に該当する商品

8%

テイクアウトや宅配

8%

酒類

10%

10%

そのため、金を購入するときには10%の消費税を上乗せして支払う必要があります。

例えば、100万円の金を購入する場合には、10万円の消費税を上乗せした110万円を支払うことになります。

計算例
金の価格 100万円 + 消費税10% 10万円 = 金の購入価格 110万円

500万円の金を買ったときには消費税が50万円になるので、金額の大きな金を買うとそれだけ消費税も大きくなります。

消費税は金の価値に影響があるわけではなく、110万円の現金を支払ったとしても手に入るのは100万円の価値がある金です。

金を売却するときの消費税

金を売却するときには消費税を請求することができます。消費者の視点では金の販売業者から金を買ったときに消費税を支払うのは商品購入という考え方をすると自然でしょう。

しかし、売却する際には買取業者が自分から金を買う行為になります。

つまり、業者が消費税を購入価格に上乗せしているのと同様に、金を売るときには消費税を上乗せすることが可能です。

例えば、100万円の相場になっている金を売却するときには、業者に対して110万円の支払いを求めることが可能です。

買取業者への請求金額
金の価格 100万円 + 消費税10% 10万円 = 金の売却価格 110万円

500万円の相場のときに売れば550万円での買い取ってもらうことができます。金の相場が高いときに売れば、その分だけ大きな金額の消費税を受け取ることが可能です。

増税によって税率が上がったとしたら、消費税の支払額を税率に合わせて請求できます。

仮に20%の税率になったとすると、500万円の相場の金は600万円で買い取ってもらえます。

買取業者への請求金額
金の価格 500万円 + 消費税20% 100万円 = 金の売却価格 600万円

消費税の納税義務

消費税は商品の販売やサービスの提供によって取引をした側に課される税金です。商品の購入やサービスの利用をした側が消費税を納める義務はありません。

消費税についてあまり詳しくなかった人はおかしいと思ったのではないでしょうか。スーパーで食品を買ったときには消費税を支払っているでしょう。

しかし、税法上は食品を買った消費者は課税対象ではありません。食品を販売しているスーパーが課税対象で、消費税を納税する義務を負っています。

消費税の納税義務者
消費者 事業者

ただ、消費税の税制として、商品の販売者やサービスの提供者などの事業者が消費税を負担しなければならないとは定められていません。

商品の購入者やサービスの利用者に対して請求することが禁止されていないため、商品やサービスの料金に上乗せして消費者に請求しています。

このような消費税のあり方が世界的にも一般的になっているため、日本でも同じやり方が定着しています。売る側が買う側に消費税を請求し、売った側が消費税を納めるというのが一般的な流れです。

消費税の納税の必要性

金の購入をしたときには販売した業者が消費税を納めています。すると、金を売却したときには消費税を納めなければならないのではないかと思うでしょう。

消費税を納める必要があるかどうかは課税対象になるかによって異なります。

納税の必要性
会社員

消費税の課税対象外

公務員

消費税の課税対象外

法人

消費税の課税対象

個人事業主

消費税の課税対象

基本的に会社員や公務員などとして働いている個人は消費税の課税対象になりません。

法人や個人事業主として事業を営んでいる場合には消費税の納入義務があります。

ただ、消費税の納税には免除を受けられる特例があるため、条件を満たせば消費税を納入する必要はありません。

消費税納税の免除特例
特例①

前々年度の課税売上高が1000万円以内

特例②

事業を始めてから2年以内

例えば、前々年度の課税売上高が1000万円以内の場合には納税義務が免除されます。また、事業を始めてから2年以内の場合にも納税義務がありません。

納税義務が免除されている法人や個人事業主あるいは個人の場合には手に入れた消費税を利益にすることができます。

ただ、正確に言えば購入時点で支払っている消費税があるので、売却した時点の消費税が全額利益になるわけではありません。

例えば、税抜500万円で購入した金を税抜600万円で売却したとします。すると、550万円で購入して660万円で売却するので、利益は差額の110万円です。

計算例①
金の売却価格 660万円 消費税:60万円 金の購入価格 550万円 消費税:50万円 = 利益 110万円

売却時の消費税は60万円ですが、購入時の消費税の差額分だけが利益になることがわかります。

平たく言えば、個人や消費税の免除対象になっている法人や個人事業主の場合には、金の売買利益が10%上乗せされます。

ただ、もし金相場が下がった場合には損失が増えるので注意しましょう。

税抜500万円で購入した金を税抜400万円で損切りして売らなければならない場合には、550万円で購入して440万円で売却するので110万円の損失です。

計算例②
金の売却価格 440万円 消費税:40万円 金の購入価格 550万円 消費税:50万円 = 損失 110万円

もし消費税がかからなかったとしたら100万円の損失で済みます。

消費税は安易にメリットになると考えるとリスクがありますが、利益は大きくできるので個人にとって税制的には魅力があります。

売却益に課税対象になる所得税

金の売却では利益が出た場合には所得が発生します。どのような立場で金の売買をするかによって所得の種類には違いがありますが、所得税を納めることになります。

所得区分 対象
事業所得

事業として営利目的で金の売買をした場合

雑所得

個人が事業とはせずに金の売買をして利益を得た場合

譲渡所得

資産運用として個人が金を売買した場合

一般的には譲渡所得に該当することが多いでしょう。

金の売却によって利益が出たときに税金を納める必要があるかどうかは課税譲渡所得の有無によって判断できます。

金の売却によって得られた金額から、金を購入したときに支払った金額と、売却にかかった手数料などの譲渡費用を差し引いた金額が譲渡所得です。

譲渡所得=金の売却額-金の購入額-金の売却にかかった諸費用

他の譲渡所得と合わせて50万円以下だった場合には、譲渡所得の特別控除として50万円がみとめられているので非課税になります。

課税対象額=譲渡所得合計-50万円

50万円を超えていた場合には課税対象額を計算して所得税を納めることが必要です。

所得税の課税対象になる金額は金の所有期間によって違います。

譲渡所得 金を所有していた期間
短期譲渡所得

5年以内の所有期間

長期譲渡所得

5年を超える所有期間

5年以下の場合には短期譲渡所得になるため、売却額から購入額と譲渡費用を差し引き、控除を適用した金額が課税対象です。

しかし、5年を超えて所有していた場合には短期譲渡所得の半分になります。

課税対象額=(譲渡所得+他の譲渡所得-50万円)÷2

譲渡所得は総合課税なので、給与所得や事業所得などと合わせて税額を計算することが必要です。

日本では所得税が累進課税になっているので、売却益が大きいときには税率が上がってしまう場合もあります。

受け取るとかかる贈与税

金を親からもらったというようなケースでは贈与税がかかります。親から金を譲り受けた、友人からもらったというときには贈与税の負担が必要です。

贈与税については金の贈与をした人の間柄によって課税の仕組みが異なります。

贈与の合計額 課税の有無
110万円以下

非課税

110万円以上

一般贈与税
特別贈与税

ただ、どのような場合でも贈与を受けた金額が110万円であれば基礎控除によって相殺されるので贈与税の負担はありません。

金だけでなく他の財産を贈与した場合には、合計額が110万円以下になることが非課税になる条件です。

もし110万円以上の贈与を受けた場合には一般贈与税または特別贈与税を納める必要があります。

特別贈与税

特別贈与税は直系尊属から成人の直系卑属への贈与について適用される贈与税です。

贈与額から110万円の基礎控除を適用した課税対象額に対して、以下の税率と控除額に基づいて算出された贈与税を納める必要があります。

課税対象額 税率 控除額

200万円以下

10%

0円

400万円以下

15%

10万円

600万円以下

20%

30万円

1,000万円以下

30%

90万円

1,500万円以下

40%

190万円

3,000万円以下

45%

265万円

4,500万円以下

50%

415万円

4,500万円超え

55%

640万円

一般贈与税

一般贈与税は特別贈与税に該当しない夫婦間、兄弟姉妹間、友人間などの贈与のときにかかる贈与税です。

特別贈与税の場合と同様に、一般贈与税でも基礎控除を適用した後の課税対象額に対して以下の税率と控除額によって贈与税を納めなければなりません。

課税対象額 税率 控除額

200万円以下

10%

0円

300万円以下

15%

10万円

400万円以下

20%

25万円

600万円以下

30%

65万円

1,000万円以下

40%

125万円

1,500万円以下

45%

175万円

3,000万円以下

50%

250万円

3,000万円超え

55%

400万円

相続すると発生する相続税

金を所有したまま亡くなった場合には、金は相続資産の一つになります。

相続では金を誰がどれだけ相続するかが大きな問題です。故人によって遺言書が書かれていて誰が相続するかが示されていない場合には、遺産分割協議を通して決めることになります。

法定相続人の間で遺産が分配されますが、誰がどの遺産を引き継ぐかは遺産分割協議で決めることが必要です。

相続が発生したときには金だけでなく他の遺産についても加味して、相続財産の全額に対して相続税を計算します。

法定相続では基礎控除が認められているため、法定相続人の人数×600万円+3000万円をまず控除することが可能です。

基礎控除=法定相続人の人数×600万円+3000万円

法定相続人が配偶者のみだった場合には3600万円、配偶者と子2人だった場合には4800万円の基礎控除額になります。

※配偶者のみの場合

1人×600万円+3000万円=3600万円

※配偶者と子2人の場合

3人×600万円+3000万円=4800万円

基礎控除によって相続財産の全額が相殺されなかった場合には相続税を納めなければなりません。

課税対象になるのは相続財産とみなし相続財産、相続時精算課税が適用された贈与財産の合計から、非課税財産や債務や葬式費用を引き去った金額です。

課税対象額=(相続財産+みなし相続財産+相続時精算課税)-(非課税財産+債務+葬式費用)

相続開始前3年以内に相続人から贈与された財産も課税対象になります。

このようにして計算された金額から基礎控除を引いた金額によって課税遺産総額が決まります。

課税遺産総額=課税対象額-基礎控除

そして、法定相続人のそれぞれの法定相続分に対して累進課税によって決まる税率と控除額を適用することで相続税を算出できます。

資産が金か現金かによって相続税が変わるわけではありません。ただ、金の評価額が高ければ相続税も高くなります。

金を購入して資産価値が上がった場合には相続税の負担が大きくなりますが、逆に金の価値が下がったときには相続財産が小さくなって税額も抑えられます。

他の相続財産の評価額によって相続税がかかるかどうかも変わる点には留意しておきましょう。

まとめ

金の購入や売却をして資産運用をするときには消費税、所得税、贈与税、相続税がかかる可能性があるので注意しましょう。

消費税は購入したときには支払うことになりますが、売却するときには受け取ることができます。

金の価格が上がっていたら消費税額が増えるので利益を大きくすることが可能です。

しかし、売却によって利益が出たときには所得税を納めなければなりません。

譲渡所得になる場合には金を所有していた期間によって税率が変わるので注意が必要です。

贈与や相続についても税金がかかりますが、控除が適用されるので納税が不要になる場合もあります。

ただ、贈与税や相続税は納税が必要な場合には正しく計算して納めなければなりません。金の売買をするときには税金を意識して運用していきましょう。