金投資をするときには金相場を把握することが重要です。金の相場価格を核にする方法としてよく用いられているのが証券会社などによって提供されているチャートです。
株式投資やFXなどの経験があるとチャートを読み慣れているかもしれませんが、これから初めて投資をしようと思っている人にとってチャートは難解なものでしょう。
この記事ではチャートの見方をわかりやすく紹介します。チャートを読む上で理解しておきたい社会動向についても解説するので参考にしてください。
Contents
チャートは金の相場がどのように変化してきたかを示したグラフです。金に限らず銀やプラチナ、株式や為替レートなどの経時的変化を見るときにもチャートが使用されます。
市場で取引されているものについて、過去の価格の変動が一目でわかるようにまとめてあるのが特徴です。
金相場チャートは過去の金価格の推移から、現在の金相場の状況を理解し、今後の金相場の動きを予測するのに使用します。
金投資では金の価格がこれから上がるか、下がるかを予測して売買の判断をする必要があります。
価格が上がるなら金を買い増しし、価格が下がるなら手持ちの金を売却するというやり方で資産を増やすことができるからです。
チャートは相場を分析する目的で用いるツールです。金相場チャートの見方がわかると金の売買をするタイミングがわかるので、合理的な考え方で金投資を進められるようになります。
金相場チャートの見方にはルールがあるわけではありません。過去の金相場の推移を見て解釈し、売買のタイミングを見つけて注文を出す判断をするという意識をして見るのが大切です。
そのためにはまずチャートの種類や時間足などの基本的なポイントを押さえる必要があります。
チャートの基本がわかったら、実際にチャートの分析をしてみると見方を身に付けられます。金相場の流れからトレンドを見つけたり、転換点を予測したりして売買の判断を下すのが一般的です。
ここではチャートを使用する高度な分析方法として有名なテクニカル分析の基本的な部分にも触れながらチャートの見方を解説します。
金相場チャートの見方
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チャートの時間足とはグラフの横軸の目盛りに相当するものです。1分足、1時間足、1日足、週足、月足、3か月足、年足、5年足などといったさまざまな時間足のチャートがあります。
1日足なら1つの目盛りが1日を表しているため、横軸に30個の目盛りがあるとおよそ1か月間の金相場の推移を一目で確認することができます。
月足で36個の目盛りがあれば36か月分、つまり3年分の推移を見ることが可能です。
チャートを表示するときにはどのくらいの期間を考えて金投資をしたいかに応じて、適切な時間を選ぶのが大切です。
年単位で金投資をしたいのに週足のチャートを見ていては先行きを推測することはできません。
年単位で投資するなら月足や3か月足、年足のチャートを表示して、金相場の展望を読み取れるようにしましょう。
チャートの時間足はチャートの設定を変更することで自由に設定できます。チャートアプリによって設定できる範囲には違いがありますが、金相場チャートでは短くても時間足、通常は週足・月足・年足あたりを使うことが多いので大抵のアプリで表示可能です。
チャートを見る上では始値・終値・高値・安値という言葉を知っておく必要があります。
1日足チャートを例にすると、それぞれの指標の意味は以下のようになります。
それぞれの指標の意味 | |
---|---|
始値 |
1日の始まりのときの金価格 |
終値 |
1日の終わりのときの金価格 |
高値 |
1日で最も高かったときの金価格 |
安値 |
1日で最も安かったときの金価格 |
始値よりも終値が高かったら相場は上がっていることがわかります。逆に始値に比べて終値が低かったら相場が下がっている状況です。
高値が大きいのに終値は低いという場合には、この日に金相場が一時的に高騰したけれど、反発が起こって相場が下がったと解釈できます。
この4つの指標を読み解くだけで1日の金相場の動向を窺い知ることができるので覚えておきましょう。
世の中でよく用いられているチャートには以下の3種類があります。
チャートの種類
目的に応じて使い分けるのがベストですが、日本の投資家の間ではローソク足チャートが最も人気なのでまずはローソク足チャートを使うのがおすすめです。
ラインチャートは終値をつないだだけの折れ線グラフなので最もシンプルです。
金相場チャートをとにかくわかりやすくして、全体的な動きを俯瞰したいときに適しています。
バーチャートとローソク足チャートは始値・終値・高値・安値を表示するチャートです。
アメリカやヨーロッパではバーチャート、日本ではローソク足チャートがよく用いられています。
ラインチャートよりも詳細な分析ができるため、金相場の動きを細かく理解して売買のタイミングを判断するときにはバーチャートかローソク足チャートを用いた方が良いでしょう。
日本でよく用いられているローソク足チャートではローソク足の見方が重要です。日足チャートを例にして、ローソク足の見方を簡単に理解しておきましょう。
ローソク足は実体と呼ばれる太線とヒゲと呼ばれる細線から構成されています。
実体は陽線と陰線の2種類があり、始値よりも終値が高い(=金価格が上がった)ときには陽線、始値よりも終値が低い(=金価格が下がった)ときには陰線になります。
陽線と陰線は青と赤、黒と白抜きといった形で色分けされているため、価格が上がったか下がったかを一目で判断可能です。
陽線の場合には実体の下端が始値、上端が終値です。陰線の場合には下端が終値、上端が始値を指します。
ヒゲは実体の上と下から生えている細線で、上端が高値、下端が低値を示しています。
上ヒゲが長いときには金相場が大きく上昇して反発を受けたことがわかります。下ヒゲが長いときには金相場が大きく下落して反発を受けた状況です。
上ヒゲも下ヒゲも長いときには金の売買が活発で相場が混戦状態になっていると解釈できます。
金投資をするときにはチャートでトレンドを見るのがおすすめです。トレンドには上昇トレンド、下降トレンドがあります。
平たく言えば、金価格が上がる傾向があるのが上昇トレンド、下がる傾向があるのが下降トレンドです。
全体を俯瞰して金相場チャートを見るとトレンドの有無は直感的に理解できる場合が多いでしょう。右肩上がりなら上昇トレンド、右肩下がりなら下降トレンドです。
金投資のリスクを回避するには転換点の見方を知っていると便利です。
例えば、上昇トレンドがあるときには金を買いたいと思うでしょう。しかし、間もなく下降トレンドに切り替わってしまう場合があります。
このようなトレンドが切り替わるポイントが転換点です。
転換点はローソク足を見て判断するのがわかりやすいでしょう。上昇トレンドから下降トレンドになるときには、金価格が上がったときの反発が強くなります。
ローソク足の上ヒゲが長くて、下ヒゲがほとんどないような状況が続いたら転換点になると予測できます。
金の実物資産で投資をするときには大まかな流れがわかれば問題ありません。
明日に転換点になるといった形で見極められなくても、1週間以内に転換点になるはずだというくらいの感覚で売買のタイミングを決められるからです。シビアに考えずに金相場の傾向をつかむために転換点を分析してみましょう。
チャートの高度な分析としてテクニカル分析があります。
ここまでに紹介したローソク足などによる分析も広い意味ではテクニカル分析ですが、狭い意味ではインジケーターと呼ばれる統計や確率論に基づく指標を用いる方法がテクニカル分析と呼ばれています。
テクニカル分析ではチャートに表示されている過去の始値・終値・高値・安値を活用して、計算によって相場の動向がわかりやすくなる指標を導き出すのが特徴です。
例えば、以下のようなインジケーターがテクニカル分析ではよく用いられています。
分類 | 名称 |
---|---|
トレンド系 |
移動平均線 |
一目均衡表 |
|
ボリンジャーバンド |
|
オシレーター系 |
相対力指数(RSI) |
安値 |
1日で最も安かったときの金価格 |
移動平均線はテクニカル分析で最もよく用いられているトレンド系インジケーターです。過去の金価格の推移の平均に基づいてトレンドの強さを見ることができます。
一目均衡表やボリンジャーバンドもトレンド系に分類されていて、相場のトレンドを分析するのに有効です。
相対力指数(RSI)はオシレーター系インジケーターの代表例で、相場の転換点を見極めるのに役に立ちます。
高度な分析力を持っている機関投資家はテクニカル分析の結果を売買のタイミングの判断材料にしている場合がほとんどです。
テクニカル分析ができるようになると、大きな売買をする機関投資家が取引をするタイミングを見極められることもできます。
すると、ちょうど金が売られて安くなったタイミングで買ったり、買われて高くなったときに売ったりするチャンスも広がります。金相場チャートの見方に慣れてきたらテクニカル分析も学んでいくのがおすすめです。
金投資をする上で金相場チャートの見方と合わせて理解しておきたいのが、世界情勢や社会的背景によって金価格が動いているということです。
金相場を動かしているのはチャートを見て売買している投資家だけではありません。政治や経済などの影響によって社会が変化すると金の需要が変化して、金相場が変わるのが一般的です。
需要と供給のマーケット原理によって金の価格が動いているということは念頭に置いておきましょう。ここでは金価格に影響する社会情勢について紹介します。
地域紛争やテロなどが発生して安全や治安に関する不安が生まれると金価格は上がる傾向があります。
日本円や米ドルなどの法定通貨は国によって価値が保証されていますが、国がなくなったらただの紙切れや安価な金属の塊です。
国が滅亡しなかったとしても、紛争によって国が廃れたり、国が貨幣をたくさん発行したりしたら国際的な通貨価値は下がるでしょう。
安定資産として不動の地位を保つ金に資産を変えて安全策を取りたいという人が増えるため、金の需要が上がって価格も上がります。
国際的な緊張や不安が高まるような地政学的リスクが見られた場合にも金価格は上がります。
新型コロナウイルスなどの感染症がパンデミックを起こす懸念があった場合には金が買われるのが一般的です。また、地震や津波、台風やハリケーンなどの自然災害による影響も受けます。
インフレが進むと金の価格は自然に上がっていきます。インフレは物価が上がっていく現象で、通貨に対して商品の価値が高くなるのが特徴です。
インフレ | |
---|---|
通貨 | モノの価値 |
金は商品なのでインフレによって価値が上がります。インフレになる傾向が見られると通貨を金にしたいという人が増加し、需要と供給の原理によって金の価格が上がるのが一般的です。
アメリカは世界経済に大きな影響力があります。アメリカの景気動向によって金の価格が動くことも多いので注意が必要です。
アメリカ経済が低迷すると世界的に不安が高まり、金が買われて価格が上がる傾向があります。アメリカの雇用統計やGDPなどが景気の評価によく用いられているため、発表時には大きな価格の変動が起こる場合があります。
日本円で金投資をする場合には米ドル/円の為替レートの影響も受けます。金は米ドル建てで市場価格が決まっているからです。
円安ドル高になると、ドルを買うのに大きな金額の円が必要になるため、相対的に金の価格が上がります。
アメリカと日本の経済動向によって米ドル/円の為替レートは変動するので、日本円で金投資をするときにはアメリカの政治・経済・金融に注意を払うのがおすすめです。
金相場チャートは金の価格がこれからどうなるかを予想するのに有用なツールです。難しそうだというイメージがあったかもしれませんが、時間足とチャートの種類だけ理解できれば直感的に分析できます。
金価格の推移を全体的に見て、トレンドを把握するのが金投資を始めるときにはおすすめです。上昇トレンドがあるときに金を購入すれば資産価値は上昇します。
転換点の分析やテクニカル分析も役に立ちますが、金投資を始めてからだんだんと身に付けるだけで問題はありません。
まずは金相場チャートの見方の基本を身に付けて、金投資を始めてみましょう。