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金の歴史を紐解く!人はどうして金に引き込まれるのか?

金の歴史を紐解く!人はどうして金に引き込まれるのか?

金はなぜ人を魅了し続けているのでしょうか。金のアクセサリーや腕時計、金塊などを目にしたら魅力的だと感じる人が多いでしょう。

何か特別な魅力があるからこそ人は金に引き込まれていると考えられます。

この記事では金と人との関係を歴史を遡って考察し、なぜ人が金に魅力を持っているのかを紹介します。

金とはそもそもどのようなものなのか、金の価値が何によって左右されるのかも解説するので、金にぜひ親しくなってください。

そもそも金とは何か?

金とはどのような金属なのでしょうか。金について漠然としたイメージを持っていても詳しく知らないこともよくあります。

まずは金という金属がどのようなものなのかを簡単に確認しておきましょう。

金の元素記号、原子番号、素材は?

金は元素記号で表すと「Au」で、ラテン語のaurumが語源になっています。化学的には原子番号は79で、周期表では第5周期の第11族元素です。

1 H 2 He
3 Li 4 Be 5 B 6 C 7 N 8 O 9 F 10 Ne
11 Na 12 Mg 13 Al 14 Si 15 P 16 S 17 Cl 18 Ar
19 K 20 Ca 21 Sc 22 Ti 23 V 24 Cr 25 Mn 26 Fe 27 Co 28 Ni 29 Cu 30 Zn 31 Ga 32 Ge 33 As 34 Se 35 Br 36 Kr


55 Cs 56 Ba ・・・ 72 Hf 73 Ta 74 W 75 Re 76 Os 77 Ir 78 Pt 79 Au 30 Zn 31 Ga 32 Ge 33 As 34 Se 35 Br 36 Kr

金はさまざまな製品の素材として古くから用いられてきました。太古の時代には祭祀に用いる神器や装飾品として利用され、貨幣が流通する時代になると高い価値のある金貨として使われるようになりました。

近年でも金は腕時計やアクセサリーなどの装飾品にもよく使用されていますが、素材としての利用範囲は広がっています。

電気伝導体として優れていることからICチップなどの電気部品に利用されています。導電性が高いことから配線剤のメッキにも金が用いられています。

医学では歯科治療に用いる金歯として金が使われてきました。生体刺激が少ない金属素材として、人工骨や鍼治療の鍼にも使用されています。

金の特性は「輝き」と「展延性」

金の特性としてよく注目されているのが金属光沢による輝きと、軟らかくて延ばしやすい展延性です。

金が昔から貴重な金属として注目されてきたのは金色と呼ばれる輝かしい姿を持っているからです。

さらに、叩くだけでも薄く引き延ばして金箔や金糸にすることができるため、太古の時代には加工しやすい性質がある金属でした。

金糸を装飾品に編み込んだり、金箔を工芸品に貼ったりすることで金の輝きを持つ製品を制作することができます。

合金によって性質を変える方法も見出されて、金の価値がより広く見出されるようになっています。

ホワイトゴールド、イエローゴールド、ピンクゴールドが有名

金はホワイトゴールド、イエローゴールド、ピンクゴールドを代表として、さまざまな種類があります。合金技術によって新しい素材が生み出され、装飾品を中心に多様な目的で利用されています。

金の純度 金の含有率
ホワイトゴールド

銀やパラジウムとの合金で、やや黄色味を持った白色の金属です。

イエローゴールド

銀と銅との合金で、黄色を強く目立たせるように仕上げています。

ピンクゴールド

ピンクがかった色合いが特徴で、銅と銀とパラジウムを合わせて製造されています。

このように合金にすることで金の美しさが広がるのは、金の素材価値が高くなっている理由です。

金の歴史を知る

金が人と関わり合うようになったのはいつ頃なのでしょうか。金の歴史を紐解いて、人とどのような関係を築いてきたのかを見ていきましょう。

古代シュメール人が金の利用を始めた

金の歴史は紀元前6000年くらいに始まったと言われています。

この時期に築かれたメソポタミア文明が基礎になり、紀元前3800年頃にメソポタミアの地で文化を築き上げたシュメール人が最初に金の存在を記録として残したとされています。

シュメール人の古代神話には金が登場していて、当時にも金の宝飾品が作られていました。このような太古の時代から人と金の関係は始まっています。

古代エジプト、錬金術、ゴールドラッシュと時代が流れ

シュメール人とはまた別に古代エジプト文明でも金の存在が知られています。古代エジプトではシュメール人によるメソポタミアよりも多くの金製品が出土しています。

エジプト文明は紀元前5000年頃に始められたと言われていて、紀元前3000年頃にエジプト王朝による文化が栄えました。エジプト王朝の時代にはツタンカーメン王の黄金マスクを代表とする金の装飾品が制作されています。

古代エジプトでは信仰の影響によって金が崇められていました。金は太陽神ラーの身体の一部とされていたため、祭祀や儀式などに使用する祭具には金が用いられる文化が生まれたのです。

結果として古代エジプトでは金の加工技術が発達して多数の金製品が製造されています。

その後も金は中国や南アメリカ、ヨーロッパなどでも重宝されてきました。ヨーロッパでは18世紀頃になると金を作り出すための研究も進められています。

錬金術と呼ばれる金を生み出す技術は学問としても求められていました。さまざまな種類の金属を混ぜ合わせたり、薬品で処理したりすることで金を作り出そうと大勢の研究者が取り組んでいました。

金は高価で貴重な金属だったため、安くて手に入りやすい金属から作りたいと思ったのももっともなことでしょう。

現在では18世紀頃におこなわれていたようなアプローチでは金を作ることは不可能だとわかっていますが、当時は大きな資産を作り上げたいという気持ちがモチベーションになって多くの優秀な人たちが錬金術に一生を捧げています。金がいかに人を魅了して引き込んだかがよくわかるでしょう。

ゴールドラッシュによって金に人が動かされたのもよく知られています。

ゴールドラッシュは19世紀の半ば以降に起こった歴史的な出来事です。アメリカのカリフォルニア・ゴールドラッシュが最も有名な事例です。

当時のカリフォルニアは砂漠地域を開拓した段階で、まだ人口も少ない町がある程度でした。

開拓の過程で金脈が発券されたことが大きなニュースになり、アメリカの刻海外からカリフォルニアに移住する動きが生まれました。金を掘り当てて億万長者になれるかもしれないと考えたからでしょう。

ゴールドラッシュ

中国からのは特に多く、金脈の発見から30年後にはカリフォルニアの在住中国人が11万人に到達しています。中国人人口は全米で15万人程度だったことを考えると、いかに金鉱脈が見つかったインパクトが大きかったかがわかるでしょう。

カリフォルニアに続いてオーストラリアのシドニーでもゴールドラッシュが起こりました。砂金の発見をきっかけにして金鉱業が発展し、数々の金塊が採掘されています。

政治にも金による利権を活用してきた歴史があり、オーストラリアを支える資源となりました。金の埋蔵量が多いオーストラリアは今でも金の産生国として重要な位置を占めています。

日本の金歴史の始まりは8世紀。佐渡金山。

佐渡金山

日本で金が発見されたのは8世紀だと推定されています。続日本紀の記述に宮城県涌谷町付近での金が発見されたことを示す記述があるからです。

752年に建立された東大寺の大仏にも金が使用されているため、少なくとも8世紀の半ばには金の存在と価値が知られていたと言えるでしょう。

中国との文化的なかかわりも深かったことから、8世紀以前から金が使用されていた可能性もあります。

8世紀以降日本では金を貴重な財産として貴族文化を支えてきました。日本で金の生産を支えてきたのは佐渡金山です。

佐渡金山の存在は今昔物語集にも記述があり、黄金の島ジパングの基礎となっていた金の島として知られていました。江戸時代に金鉱脈が発見されたことでさらに有名になり、江戸幕府は直轄領として金の採掘をして金の貨幣の鋳造に用いています。

しかし、江戸中期になると金の産出量が低下し、江戸幕府も緊縮財政にせざるを得なくなりました。この問題は技術開発によって改善され、明治時代には佐渡金山での増産が進められました。

その後、1989年の操業休止に至るまで佐渡金山は日本の金文化を支えた金山として有名です。

なぜ人は金に引き込まれるのか?

世界の歴史を紐解いてみると人がいかに金に引き込まれてきたかがわかるでしょう。なぜ人はこれほどまでに金に魅了されてきたのでしょうか。

現在でも金の魅力に心を奪われている人がたくさんいます。金の魅力とは一体何なのでしょうか。

金の魅力

金が太古の時代から魅力的な金属として崇拝されていたのは、普遍性の高い美しさがあるからです。金を見たらきらびやかで美しいという印象を持つ人が多いでしょう。

黄金色で光沢によって輝く金の姿は人を魅了し続けてきました。人がもともと持っている感性で金が美しくて魅力的だと感じ取っているのは確かでしょう。

金の魅力

金は銅や鉄などと違って変化しないのも太古の昔から信仰対象になってきた理由です。

銅や鉄などの金属はだんだんと錆びてきてしまいます。見た目が悪くなるだけでなく、食器や武器などとして使えなくなるという問題がありました。

金属のイオン化傾向

K(カリウム) Ca(カルシウム) Na(ナトリウム) Mg(マグネシウム) Al(アルミニウム)
Zn(亜鉛) Fe(鉄) Ni(ニッケル) >Sn(スズ) Pb(鉛)
Cu(銅) Hg(水銀) Ag(銀) Pt(プラチナ) Au(金)

しかし、金には不変性があります。銅や鉄のように空気中の酸素によって酸化されることがなく、いつまでも美しい姿を保つことができるのが魅力です。

不老長寿や不死につながるため、信仰対象となったり、祭祀に用いられたりしてきた歴史があります。

金には希少価値があるのも魅力です。中世以降は資産としての金も注目されるようになり、資産家が積極的に買い集めていた時期もあります。

金は日常に存在する金属の中でも埋蔵量が少なく、限られた資源です。希少性があって不変性も兼ね備えていることから、価値のある資産として現在でも注目されています。

金の価値はどうやってきまるのか?

金は現代では換金性がある資産としての注目が高まっています。装飾品としての美しさもさることながら、資産価値も高いことから通貨と代替になる資産としての魅力もあるのは確かでしょう。

資産として所有する際には価値が高いことが重要です。金の価値はどのようにして決まるのでしょうか。

金の価値の決まり方

※各項目をクリックするとそれぞれの項目冒頭へ移動します。

金の純度

金の価値は純度によって左右されます。K24、K22、K18などは金の純度の指標としてよく用いられています。

金の純度 金の含有率
K24・24金

純金99.99%~100%

K22・22金

純金91.7%:混合物8.3%

K18・18金

純金75%:混合物25%

K14・14金

純金58.5%:混合物41.5%

K10・10金

純金42%:混合物58%

最も品位が高いのがK24で、金の純度は99.99%~100%です。K18の場合には純度が75%で、残り25%は他の金属などになっています。

金の価値で考えるとK18の場合には25%が金ではないため、K24の4分の3しか価値がありません。

実際には高純度の金にするには技術やコストも必要なので、純度が高くなればなるほど金の価値は上昇します。

需要と供給

金の価値は需要と供給の影響によって上下動します。金の産生量は各国でコントロールされています。

2021年の金の産出量
中国

370t

オーストラリア

330t

ロシア

300t

米国

180t

カナダ

170t

ガーナ

130t

メキシコ
南アフリカ
ウズベキスタン

100t

インドネシア
ペルー

90t

限りある資源なので、資源国では埋蔵量を考慮して長期的に金の輸出による利益を得られるようにする必要があるからです。

金はICチップなどにも使用されるようになって需要は上がっていますが、埋蔵量は減っていく一方なので供給量は増える傾向はありません。新たな金鉱脈が見つかって増産されると供給量が増加して金の価値が下がるでしょう。

しかし、現状としては需要の高騰によって金の価値は上がる傾向があります。需要と供給の市場原理は金の価値にも適用できるので、資産として保有する場合には気にかけましょう。

今の金の価値を知るためには

今の金の価値を知るには相場を確認することが必要です。金の取引相場はロンドン市場によってほぼ決まる仕組みになっています。

ロンドンでの金取引相場に応じて、世界での金の売買価格が決まります。相場は米ドル建てで決まるため、日本円での金の価値を知るにはロンドン市場での相場と米ドル円のレートを考えることが必要です。

米ドル建てで金の価格が上がれば金の資産価値は高くなります。しかし、円安ドル高によって米ドルが高くなると、円に対する金の相対価値は低くなります。

米ドルと金価格の関係
米ドル 金価格

結果としてロンドン市場での金相場は上がっていても、日本円に対する金の価値は低くなることもあり得ます。

ただ、現代では米ドルを世界の基軸通貨として使用して通貨や物の価値を測るのが一般的です。

ロンドン市場の相場が上がっていれば、金そのものの価値は上がっていると考えられます。

歴史的には金の相場は上がり続けているので、今後も価値が上がっていくと期待できます。

まとめ

金は美しい輝きをずっと保ち続けられる特性があるため、メソポタミア文明やエジプト文明の時代から神秘性のある金属として人々を魅了してきました。

希少性も高いことから現在でも価値のある資産として保有している人が大勢います。金は錆びて品質が低下することはなく、不変性のある資産としての魅力があります。

普遍的な美しさと素材としての需要を持つ金は、今後も人々を魅了する金属としての地位を保ち続けるでしょう。